Tree climbing ツリークライミング アーボリスト 特殊伐採 SRT DdRT スローライン アンコウフック

木登り日和

特殊伐採にあこがれるサンデーツリークライマー(平日サラリーマン@デスクワーク)

フリクションデバイス考

フリクションバイス、色々ありますね。ユニセンダー、ロープレンチ、ヒッチハイカー、ロープランナー、ブルドックボーン、アキンボ、ジグザグ+シケイン、、、いや、本当色々あるな。

こんなにあると、色々試して、アッチが良い、コッチが良いとなりますよね。そして、コレはCE取ってるだ、アレは推奨ロープがあーだとか。何が本当なのか分からない(笑)

私がフリクションバイスで最も興味関心があるのは、これらの原理であります。

さて、本記事は、フリクションバイスについて自分なりの考察をまとめたものになります。科学的に全く正しいかは分かりませんが、理科の教科書と実体験で得た知見をミックスしたものです、話し半分で読んでみてください。

 

さて、第一に我々はフリクションバイスに何を求めているのかを確認しましょう。

1.引き上げ時は抵抗が無い。

2.同様にたるみを取る動作に抵抗が無い。だけど、遊びがなくピタッと止まって欲しい。

3.荷重かけたら絶対に止まる、滑らないで欲しい。

4.だけど、下降時は力を入れなくても下降が始まって欲しい。

5.ガクッと下降しないで欲しい。

6.スムーズに下降が始まって欲しい。

7.だけど、ゆっくりだけじゃなく、ここぞという時は、フリーになって欲しい。

8.スピードが乗っても、止まる時はしっかりブレーキが効いて欲しい。

 

いかがでしょうか?求める機能、共感いただけますでしょうか。

しかし、改めて考えると、なんて贅沢な要求なのでしょうか。いや、贅沢を通り越して、矛盾。本当に無茶な要求をデバイスにしてますな(笑)

「いらない抵抗(摩擦)は認めん。欲しい摩擦(抵抗)だけよこせ!」

本当、デバイス側から見たら極悪なカスタマーですよ。

言いたいこと一つ目

「我々は物凄く高い要求をデバイス君にしているんだ」

 

でも、こんな無茶振りにデバイス君たちは懸命に応えてくれます。動力も、センサーも、コンピュータも使わずに、、、。そう、唯一使うのは「摩擦力」。

冒頭に並べた各デバイスに共通しているのは、この摩擦を発生させるポイントが2箇所あるんですね。各デバイスの見た目が、だいぶ違うので原理が違うように思えますが、私的には「原理は全部一緒」です。

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仕組みとしては、2つの摩擦部があり片方が、摩擦力を変化できるようになってます(可変)。上の写真だと「1」の部分が可変になってますな。

上側が可変なのが、ヒッチハイカー、ロープレンチ、ブルドックボーン、アキンボ。

下側可変なのが、ロープレンチ+プルージック、ジグザグ+シケイン

例外が、ユニセンダー。ユニセンダーは一巻きしてフリクションを発生させるか、手で調整することが推奨されてますね。2箇所の摩擦部が常にある訳ではなく、時に手でビレイ、時に一巻きした摩擦部が必要と。個人的には、シブくて通好みなデバイスだと思ってます(笑)一度は、使ってみたい。

ユニセンダーは例外として、それぞれ可変、固定の2箇所の摩擦部で構成されているのはご理解いただけましたでしょうか。

他に各デバイスの違いとして、固定側のフリクション、可変側のフリクションのバランス。また、これらが調整可能か?が異なっております。

固定側、可変側ともに調整可能→アキンボ

可変側のみ調整可能→アジャスタブルブルドックボーン、ロープランナーPRO

調整不可→ロープレンチ、ヒッチハイカー、ジグザグ+シケイン

このようにジャンル分けできます。ちなみに、調整不可なデバイスの共通項が「プルージック」であります。プルージックは、摩擦可変能力が超高いのでしょう。シガーコントロールと言われる指先だけで、下降をコントロールできるんですから、摩擦の効き具合の調整なんて必要ないのでしょう。

 私のフリクションバイス論は「可変側が担う荷重が軽いほど、下降時の操作をより繊細にできる」であります。科学的にデータをとった訳ではありませんが、実体験からの考察的結論です。

 今までブログで積極的に紹介したことなかったのですが、実はフリクションバイスを作ることから私のツリークライミングは始まりました。完全に入口が、通常と違います(苦笑)。PPEを自作するなんて、かなりマッドな行為なので発信は控えております。

 はじめてのクライミングは、プルージックでやるDDRTでしたが、色々調べるとSRTもやりたくなりまして。しかし調べてみると道具が無茶苦茶高い。でも、よく見ると原理は単純だ。ならば、自分で作ってやろうと研究が始まりました。クライミングを始めてから2ヶ月後ぐらいでしょうか。色々な調整や試験を重ね、それなりに使い物になるデバイスができました。皆さんお気づきの通り、ブルドックボーンを参考にしてます(楽器でいうところの耳コピみたいなもんで、見コピ)。ちなみに、本物は、一度だけちょびかしか触っただけですので、実際のところ自作品がどこまでブルドックしているか分かってません。

 もちろん、道具を作るだけでなく、クライミングの原則、墜落と落下、安全率と規格の成り立ちなどの学習も同時にしました。

 このDIYで、色々勉強しました。本当に微妙な隙間の感覚で摩擦がガラリと変わったりするのを、身をもって知りました。私、ずっと11.5mmのロープを使ってまして、このロープでベストパフォーマンスが発揮されるように仕上げていました。11.8mmのドレーナラインを手に入れて試したところ、操作感が全く違うこと!たった0.3mmです。だけど、全然違う。「あれ〜?完璧に仕上げてたはずなのに、なんでこんなに変わるもんか?!」って。0.3mm違うだけで使いもんにならなくなりました。

 また「これで良し!調整完璧!」と思って使っていると「あれ?滑る、止まらねぇ〜!?」なんてこともあったり。なんでか考えると、使っているとロープが扁平になることが原因でした。じゃあ扁平でもしっかり止まるようにすると、今度は摩擦強すぎになったり(笑)

 何が言いたいかと言いますれば、この手のメカニカルデバイスに「完璧な動作を常に求めるのはナンセンスだった!」のです。

 フリクションバイスって、変数が多すぎるのです。ロープ径、ロープ表面の状態(消耗具合、汚れ)、ロープの形、常に一定じゃありません。同じロープでも刻一刻と変化します。また持っていく道具の量で、重量は常に変わります。10kg変わると、これまた違ってきます。よく、人によって「これが良い」「あれはダメだ」って話ありますが、あれ体重の要素も大きいと思います。

 で、この多様な変数を、わずか5段階かそこらでバッチリ合わせられる訳ないんです。だから、そもそもこの手のデバイスに完璧を求めるのは、ナンセンスなんです。

軽く操作したいなら、滑るし。絶対に滑りたくなきゃ、硬い。

考えてみりゃ、超当たり前の結論なんですが、こうも色々な製品があると何か夢のような製品があるんじゃないの?!って期待しちゃう(笑)

 で、それを踏まえての私の結論は、「愛したデバイスが最高のデバイス

非常に感情的な結論ですが、コレが本当のところかなと。各デバイス、癖というか一長一短があります。結局、自分が大事にしている部分は何なのか?で、決まるのではないかと。

そして、私は、、、アキンボを愛してしまいました(笑)。自作デバイスは、別格の思い入れがありますが、道具としてはアキンボの軽さ、コンパクトさ、製品の仕上げの良さに惚れました。

よく、アキンボは硬いという評を聞きますが、セッティングでだいぶ変わりました。私は、ですが。

 

次回「アキンボの設定について語る」

 



つづく