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木登り日和

特殊伐採にあこがれるサンデーツリークライマー(平日サラリーマン@デスクワーク)

アキンボの設定について語る

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私が愛してしまったデバイス、アキンボ rock exotica社(USA製)

はじめて、ネットで見たときはこのパカッと開く機構に感動しました。いやー、アメリカ人のデザイン力、発想は素晴らしい。
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アキンボがどんなものか、知らない方のために。こんな感じでロープを通します。
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閉じて、ロープをセット。
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折りたたむと、ぶら下がれます。
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本題に、入る前に調節機能の原理について確認です。偏心の軸がありまして、これを回すとロープが通っている隙間を広げたり、狭めたりできます。広げると摩擦減、狭めると摩擦増。
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こちらは、上部摩擦部の調整表示です。アルファベット、A~Gの7段階です。
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この軸をくるくるして、2本のピンが穴に入って固定します。
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調整が終わったら、ストッパーを閉じる。工具なしで調整できます。素晴らしい。
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下部です。こちらも、偏心軸を回して、隙間の開け閉めで調整。ロープを押さえる片側は、カラビナに接続します。ここは上部と違って動きます。体重がかかれば閉。
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体重がかからなければ開。つまり、ロープフリーになります。だから、上昇はスムーズになる。
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ロープを挟み込む部分は、溝が掘ってあります。この一工夫が、ロープの扁平を和らげます(扁平しない訳ではない)。ちなみに、ロープランナーPROはこの部分がフラットになっています、だから扁平がきつくなっていたんだと思います。ロープランナーPROは使っているうちに、削れて溝ができていくと「覚醒」するようです。ちなみに私は、「覚醒」させてやるまで、愛せなかった…。
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と、ここまでが機構の確認でした。

上部、下部ともにフリクション(摩擦)を調整することができます。そして、上部は摩擦をダイレクトに変化させることができます。

ロープが曲がると摩擦大

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ロープが直線的になると摩擦小

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 ロープのちょっとした曲げ方の変化で摩擦は驚くほど変わります。この摩擦の変化の仕事をしているのが上部の「可変側」です。

あ、摩擦の「可変」と「調節」という言葉を使い分けています。伝わっていますか?ロープの通り道の開け閉めで基本的な摩擦を設定するのを「調整」。使用時に、摩擦を最大から0までに手で操作するのを「可変」と呼んでいます。

 

さて、そもそも「摩擦」とは何か、摩擦係数、摩擦力、、、ありましたねぇ。間違いなく義務教育課程で学習しています。復習しましょう。

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摩擦力 = 摩擦係数 × 重さ

重量物があったとしても、摩擦があるかないかで、動かすために必要な力は変わるんでしたよね。摩擦力の大小を決めるのが、摩擦係数でしたね。ツルツルの床は、摩擦係数が小さいから滑るわけです。「摩擦」と一言で言っておりましたが、摩擦係数と摩擦力は別物です。

 

前述の部分を正確に言いますと、、、

「上部、下部ともにフリクション(摩擦)摩擦係数を調整することができます。そして、上部は摩擦摩擦係数をダイレクトに変化させることができます。」

分かりますか?分かりましたね。この表現の違いを。ここ大事です。

 

はい、アキンボに置き換えます。いよいよ、本題です。

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あなたは、このアキンボにぶら下がっていて止まっているとします。あなたの体重は60kgだとしましょう。

止まっているということは、アキンボの摩擦力は60kgです。59kgでも61kgでもありません。ジャスト60kgです。(※力の単位はNニュートンなのが本当なのですが、直感的に分かりやすい表現にしております)

そして60kgの摩擦力は、2か所の部分(上部と下部)に分散して力が発生しています。どのように分散するかは、アキンボの摩擦係数の設定によります。

上部30kg、下部30kgに均等に荷重がかかる設定もあれば、上部10kg、下部50kgとバランスが違う設定もあるでしょう。どちらも、止まっている状態では変わりはありませんが、下降をしようとする場合に違いが出てきます。

下降をするということは、摩擦力が60kg未満になるということです。60kgから離れるほど落下速度は大きくなり(例えば40kg)、60kgに近いほど(例えば59.9kg)ゆっくり下降します。

では、考えてみましょう。

あなたはゆっくり下降したい、つまり摩擦力を59.9kgにしたい。

さてここで一考。「30kgを29.9kgに変化させるのと10kgを9.9kgに変化させるのどちらがコントロールしやすいか」どう思います?

私は、10kgを9.9kgに変化させる方が簡単だと考えます。10と9.9の差は1/100ですが30と29.9の差は1/300です。その差は3倍。この差は、操作に必要な繊細さを表すと考えます。1/300の精度を求められるのと1/100の精度を求められる、どちらが楽か?

 なかなか言葉では、伝わり切らないかもしれません。実際にぶら下がってもらうと私の言わんとしていることを理解してもらえます。アキンボ所有の方は、ハーネス一式もって外に行きましょう。

そして、次の設定をためしてください。

上部フリクション最大&下部フリクション最少

これで下降を試みてください、簡単に下降は始まらないと思います。力を込めて「ガクッ」としたら落ちるように下降が始まると思います。危ない降り方です。

一番いけないのを体験してもらったら、次の設定をしてみてください。

上部フリクション最少。下部フリクションを最少でぶら下がる。たぶん、止まらないので、あなたの体重を止めるフリクションまで一段階ずつ上げる。

止まったところか、そこから1フリクションを強めたところが最適設定です。あとは、上昇時の抵抗感との好みとの兼ね合いになると思います。

 もし、上部が最少で下部最大で止まらなければ体重オーバーか、使っているロープが不適と判断していいかもしれません。上部を1段階フリクションをあげても良いかもしれませんが、残念ながら軽やかな操作感は失われてしまうかもしれません。こればっかりは、あなたとアキンボの相性であります。

 結論を繰り返します「上部は、フリクション最少(A設定)下部は、あなたを止めるフリクション近辺」「アキンボの上部はA設定固定で、下部のみを設定せよ」

 これが私のアキンボ設定です。私の好みなので、絶対ではありませんが、お試しいただければと思います。アキンボは硬いとお嘆きのあなた、騙されたと思って試してみてください(^ ^)

(騙してたら、ごめん!)

 

 設定の提案は以上ですが、追記。

アキンボは「推奨ロープが決まっている」との話が先行しがちですが、なぜ推奨ロープがあるかというと「フリクションバイスは変数が多すぎる」からだと推測します。デバイスだけでは、動作を保証しきれないんですよ。だからある程度推奨ロープを上げているんだと思います。ここで勘違いしちゃうのが「=推奨ロープ以外危険」という発想。推奨ロープでも、扁平したら動作変わるし、汚れ具合でも変わるし。扁平したら使っちゃいけません、なんてなったら仕事にならんでしょ。一回下れば必ず扁平するんだから。

 私は、推奨とかより自然の理(ことわり)に沿っているのか、自然科学的に合っているかを重視してますし、道具は原理を理解してから使うようにしてます。もちろん、推奨ロープはメーカーが検証をしているので、ちゃんと裏付けがあると思いますが、それから外れたから即危険ではないと思いますし、推奨ロープなんだから「大丈夫」という発想が一番危ないと思います。推奨でも非推奨でも、日常点検が大事。自分の道具はどんな原理で動いているのか理解することが大事。

 

おしまい。

 

次回「アキンボへの愛を熱く語る」