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木登り日和

特殊伐採にあこがれるサンデーツリークライマー(平日サラリーマン@デスクワーク)

落下と衝撃をちゃんと考えてみよう。

墜落についての金言

「1メートルは、一命とる」

これがどういうことか、座学でお勉強です。今日は文字だけ!みんな最後まで読んでね!

 

参考になるのは、こちらの論文であります。名古屋大学の学生さんが書いてくれてます。ロッククライミングの話を前提としてますが、ロープに結ばれている状態での落下の計算は、スタティックロープに結ばれている我々にも当てはまります。

http://square.umin.ac.jp/miura/essay.dir/rope-miura.pdf

この論文が教えてくれる結論は、

墜落距離とロープ長の比率=落下係数

が衝撃の計算要素として重要である。

であります。はい、これはよく聞く話であります。ここだけ切り取れば、ちゃんとお勉強している我々には新鮮さはありません。ペツル代理店のアルテリアさんが、しっかり説明してくださってます、ご参照ください。

https://www.alteria.co.jp/sport/fallfactor-impact-theory/

https://www.alteria.co.jp/sport/forces-real-fall/

 

さて、私、落下係数が重要というのは、理解してるんですが、一方で日常生活の感覚と乖離してるんです。

ロープに結束されてると1メートルの落下でも死ぬ衝撃が発生するのは数式で理解できました。じゃ、日常生活で1メートルの落下したら死ぬんかいな?!死んでないだろうと、言うことです。

1メートルの落下で死んでたら、「リアルスペランカー」じゃねぇか!?町中が死体であふれるわい!!(「スペランカーファミコンの伝説的ゲーム。ほんのちょっとの段差で主人公が死ぬ。当時小学生の私には、そのゲームの設計思想が高尚すぎてクソゲーにしか思えなかった)

実際の世界は、1メートルぐらい飛び降りても死なないんです。

じゃ、この計算とリアルのスキマには何があるの?何が抜けてるの?

私が疑問に思っていた答えが、上記の論文にあったのです。だから皆さんとシェアしたかった。結論からいきます。

「破壊力(衝撃)は、位置エネルギーをどれだけの時間で止めたか?」

なので、あります。

ロープ長と落下距離は、実は時間を求めるのに必要な要素であって、核心は「時間」なのです。

位置エネルギー➗それを0にするまでにかかった時間=破壊力(衝撃)

と考えると、計算と日常生活の乖離を埋められます。雑です、たぶん式としては不正確です。ただ、イメージとして掴んでいただければと思い、あえて表現してます。

 日常生活では、気がつかないですが、実際は、色々な位置エネルギーを時間をかけて0にしてるんです。

 私、小学生のころよく学校の階段を一番上から飛んでました。何故かって?カッイイ、モテると思ったから。ほら、ジャッキーチェンはカッコ良かったじゃん。1メートル以上は、落下してたと思うんです。位置エネルギーとしては、身体を破壊するに十分なエネルギーあったでしょう。しかし、実際は怪我してない。しっかりヒザのバネをつかって、時間をかけて位置エネルギーを0にしてたんです。柔軟性があるだけでは、説明としては不十分。

 名古屋大学生の論文では、ロープ長と伸び率をもとに止まるまでの時間を求めて衝撃を計算してます(ここ、超重要)。ダイナミックロープは、伸びるから衝撃を吸収する、ではないんです。ダイナミックロープは、伸びて静止まで時間がかかるから結果として破壊力が軽減されるんです。スタティックは、伸びない→比較的時間をかけず静止→破壊力大。

どれだけ時間をかけているかが破壊力(衝撃)に最も影響を与えるんです。

 ヒザを屈伸しないで階段を飛び降りたら、間違いなくケガしてます。私の大学時代の先輩は酔っ払って、自販機の上から飛んだそうですが、酔いのせいでヒザのクッションを使わずに着地、腰の骨を圧迫骨折しました(幸い後遺症はなかったが、あと一歩で半身不随だったそうな)。時間をかけないでエネルギーを受け止めると、えらいことになります。

 どれくらいの時間をかけて位置エネルギーを0にしているのか、そういう風に考えると「1メートルは一命とる」の理解や、物を落とした時の壊れた、壊れなかった等々、衝撃への理解が一段深まるのではないでしょうか。

 

 

余談

 ロープクライミング講習の時レジェンドから聞いた話ですが、レジェンドがツリーモーションの製作者から直接聞いた話だそうですが「一定の衝撃がかかるとバリバリっと、ハーネスの縫製部分が切れるようにできている、だからウチのハーネスは高い」と言っていたらしいです。ハーネスを破ることで位置エネルギーを消化し人体へのダメージを軽減する。なるほど、着け心地だけじゃないんですね。